Q: キャブレターのオーバーホール
2007-11-30  質問者:XSノルゾーさん
Q & A コーナーをいつも参考にしています、ありがとうございます。
ヤマハXS1B(1971年)のキャブレターですが、混合気が濃くて不調です、整備のポイントをご教示下さい。
症状
?マフラーから若干黒煙を吐く
?走行後にはプラグが真っ黒になる
?燃費が悪い(ツーリングでの17km/Lが最良)
?冬でも暖機運転は不要
今までに行った作業
?キャブの分解清掃(各通路を念入りに)
?新品部品への交換(フロート、ピン、フロートバルブセット)
?中古良品への交換(スタータプランジャアッセン、ダイヤフラム、メインジェット、パイロットジェット、パイロットスクリュー)
?スロットルバルブ開閉の左右同調
?実油面の測定(標準より1mm低め)
?同一キャブへの交換(調子が良い)
作業結果
?症状はかわらない
?1年500km程度で症状が悪化している
交換していないパーツ
?ガスケット(本体とフロートチャンバーの隙間)
?メインノズル(Oリングを含む)
?ジェットニードル
?交換が困難なその他のパーツ
何とか調子を良くしたいのよろしくお願いします。
A:お答えします
こんにちは。


状況を詳しく記載していただき、ありがとうございます。
それでは、キャブについて少し述べさせて頂きます。


ご存知の通り、キャブは空気とガソリンを混ぜて混合気を作る装置です。
一般的には空気15に対して、ガソリン1の割合が一番爆発しやすい混合比とされています。


これを理論空燃比15:1(大気圧や大気温度をある一定と仮定した場合)と言い、
車種ごとに理論空燃比の混合気が作れるようにキャブレターはセッティングされています。


排気量や圧縮圧力により、エンジンの吸気量(空気を吸う量)が異なるわけですから、
それに見合うガソリン量が供給できるように調整するわけです。


またスロットルバルブやバタフライの開度により、吸気量が当然変化しますから、
それにもガソリン供給量を合わせていかなければなりません。


そこで登場するのが補正装置と呼ばれる部品たちです。
メインジェット(M/J)、パイロットジェット(P/J)、ジェットニードル(J/N)、パイロットスクリュー(P/S)


まだまだたくさんありますが、要するに空燃比を補正する為の部品たちです。
もちろん、チョーク機能も補正装置の部類です。


燃焼室温度が低い状態では、多少濃い目の空燃比が必要となります。
仮に13:1が調度良い割合と仮定すると、空気を減らすか、ガソリンを増やす必要があります。


空気を減らすやり方は、文字通りチョーク(首を絞める)で吸気口に蓋をします。
もう一つのガソリンを増やすやり方はバイスターター方式と言い、


特別に作られた専用通路から、必要な量のガソリンを供給するやりかたです。
補正装置はこのようなスターター(チョーク)系や、主に低回転域を補正するパイロット系、


加速時や中回転域のニードル系、高回転域を補正するメイン系と大きく分類する事ができます。
下の図は大まかな相関関係を示しています。それぞれが重複して影響し合う事がわかります。





さて、お問い合わせの車両ですが、明らかに空燃比が理想的比率からはズレています。
なぜズレてしまったか? ズレを直すにはどうしたら良いか考えてみましょう。


当然、新車出荷時のセッティングは理論空燃比の状態にになっています。
それが、経年劣化により穴が細ったり、歪みで隙間が増えたりしてバランスが崩れているんです。


これを元に戻すにはどうしたら良いか?替えられる物はすべて替えるが原則です。
古いM/Jが125番だとします。これが125番のM/Jだと信じてはいけません!


前のオーナーが穴をコジッテ広げているかもしれません??
またいくら掃除しても取れない腐食が、穴を細めて120番相当になっているかもしれません。


キャブレターは目視での良否判定ができないような精密機械です。
替えられる物はすべて替える!これがオーバーホールの鉄則です。掃除だけでは不充分です!


ジェット類をすべて替えて、フロートやフロートバルブ、スロットルバルブまで替えて・・・・・
それで新車時と同じ理論空燃比の状態にになれば、バンバンザイ!絶好調!のはずですが・・・


それでも良くならない!なんて事が時々あります。僕は「キャブは消耗品」とよく言いますが、
実際何をやってもダメなキャブを数多く経験しています!


そんな場合、次の打つ手はどうすれば良いでしょうか?・・・・キャブセッテイングのやり直しです!
ボディなど補正部品以外の本体に、経年劣化による磨耗、歪みがおきているため、


新車時のジェットセッティングでは、理論空燃比が得られなくなってしまった状態と言えます。
要するに一から出直し!今の磨耗したボディに見合ったセッティングにし直すと言う事です。


まったく違うキャブを取り付けた場合、当然キャブセッティングしますよね。
それと同じ事をしなければならないわけなんです。


長くなるので、本日はここまでにしましょう。
もしキャブセッティングの具体例が必要な場合は再度お問い合わせ下さい。


アールプロ門倉

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